第1章

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「僕の気持ちに 気づいているはずなのに、 なんで.... どうして、そんなに感情を ひた隠しにするんですか?」 距離をぐっと縮められ、 彼に両手を握りしめられる佑香 「はぁ...? それは.... それは上司として当然... 指導とか.... その..... あの......」 「僕が年下だからですか? 僕だって、れっきとした 大人の男です!」 うむを言わさず、 純粋な目で見つめられ、 情けないぐらいに しどろもどろの佑香、 逃げ場がない... 思わず目をそむける。 「僕を見てください...」 躊躇しながらも、 視線をもとに戻す佑香... 「そうやって 強気なのに、 ほんとは弱いところも... 大好きです...」 かすかに笑うと、 上司ではなく、 ひとりの女に戻った佑香を、 やさしく腕の中へ引き寄せる。 あ... 彼の温もり....... 思わず、 甘える...... なんて やわらかな胸元... 心地よくて、安心する...... ーーは!ーー なんだ これは... 立場が完全に逆転してるじゃないの.... 窓辺からは やわらかい、オレンジの 光がさしている。 もうこれは...... 温かい腕の中に抱かれながら、 現実と理性と感情が ごちゃまぜになって、 佑香は 森の中で、抵抗ができない、 小鹿のようになっていた... 鼓動のたびに、 彼の 香りが 甘く、立ち上る…… 突き放していたはずなのに、 完全に 彼の媚薬にやられて しまった自分がいる.... こんな仕打ちをした佑香を 受けとめてくれる、 彼の胸に、 彼に身をあずけるしかなかった。 多分に心の大部分も....
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