第1章

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冷やで飲む日本酒は、 このところの数か月の緊張から たちまちに、佑香を解き放った。 「係長!おめでとうございまぁす、  やりましたね、私たち!」 「ほんとみんなよく頑張りましたね!  おめでとー!」 労をねぎらいながら、 ひとりひとりの席をまわる。 みんなも饒舌だ。 ボーナスは確約もので、 この報酬と達成感が営業の醍醐味 と言っていいだろう。 もちろん伊藤君とも杯を交わす。 「おめでとう!」 「………」 --- 一瞬の間 --- 「あ、ありがとうございます。  でも、今月僕は良くはありませんでしたから…」 「そんなことないわ、大丈夫よ。  それに、  伊藤君がみんなを熱心にサポートしてくれているから  こうやって結果がでているのよ、ネ?」 佑香は実際、部下同士が協力しあって 伸びていることがうれしかった。 ただ、そのお祝いモードの中では、 ひとりだけ取り残されたような、 少し、浮かれない表情の彼の気持ちに 十分、気を配っているとはとてもいえなかった。 いや、 むしろーー 気づかないふりをしていたかったのかも……
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