夢中の理由。

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 それほど皆に恐れられている存在だが、俺は別にそうは思わない。  多少ビビることはあるけど、全然平気。だって……。 「そこ、新人3人、手が止まってる!」  俺はちゃんと仕事してるのにまとめて怒鳴られた。眼鏡の奥の目が吊り上がっている。  機嫌の悪い今は恐怖しかないな……。  冷えた空気のまま、仕事の方は終了した。  年末で忙しい時期ではあるが、今日は残業無し。というのも、 「さーて、今日は飲むぞー!」  この日は商品開発一課の忘年会。学生の頃もあったが、社会人になってからは初。  面子の年齢層が広がる分また違った雰囲気になるんだろうなと思う。  皆が意気揚々と忘年会が行われる居酒屋に向かう中、 「課長、ちょっとよろしいですか?」  歩きながら課長に声をかける彼女。十中八九、仕事の話だ。今日の営業の失態に絡むことか。  明日にすればいいのに、真面目だな。横顔と背中を見つめながら俺は2メートル程後ろの方を歩く。  一切声をかけずに。ある程度の距離を保って。
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