帰ってきた隣人

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帰ってきた隣人

東上が仕事から帰って、階段を登ろうとすると、 「あ!東上さん、今、お帰りですか。お疲れ様でした」 「ああ!犀川さんもおつかれでした」 「では」 犀川は、鍵を開けずに入って行った。 (ん?鍵、掛けずに部屋を出てたのか?) 不思議だったが、気にしないでおこうと思った。 夕飯を済ませてきたので、少しくつろごうと思い、  テレビを点けようとした。 (あれ、リモコンは…あ、しまったな…) ふと、隣から話し声が聞こえた。 「いいところを見つけたな」 「はい、絶好の場所かと」 「そうだな、ここなら問題ないだろう」 隣に、もうひとりいるようだった。 「私といたしましては、寝るだけですので」 「しかし、もっとマシな場所もあっただろ?」 「いえ!贅沢は敵でごさいます」 「そうか、それで、例の件だ。  どういうことかわかったのか?」 「申し訳けございません。まだ調査中なのですが、  憶測ならつけられます」 「ん、なんだ、話してくれ」 「あの猫の頭の中にあの子が出てきてしまうというのは、  何らかの絆が生じたのかと」 「たとえば?」 「たとえば、『友情』とか、『永遠』とか、  そういった類のものではないかと」 「うーん、そうかもしれんな。  まだ出会って数日だからな、運命的なものだろうか?」 「そのようにも思っております」 「しかし、相手は――だぞ、  そのような事が起こりうるのか?」 「考えられなくはないかと。人とは変わらない  感情を持っておりますので」 「しかし、その感情をよく表せたもんだな」 「1―ならともかく、全てにおいて成功しましたからね。  不思議でございます」 「ああ!そうだ、なぜ時間が狂ったんだ?」 「はい、それはこちらの不手際で、  自動時刻設定のアンテナがふさがれておりまして、  それで…」 「詰まらないミスだけはするな。  あの惨劇を私にもう一度見させるというのか!」 「はい、申し訳ございません。  もう、詰まらないミスは絶対に起しません」 「信頼しているからな。人質のようにしている子供たちを、  守れなかったら、私たちの命だけでは済まされんぞ」 「はい!十分に承知しております」
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