第1章

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単なる興味本位だったんだけど。 てか、だからこそ。 死んじゃったんですか、だなんて、さすがに聞けなかった。 でも、別れちゃったんですか、とも、聞けなかった。 そんな言葉は、使いたくなかった。 「......。...そうだね。料理始めたきっかけが、彼女だったんだ。 始めるのも遅すぎたし、上達も遅すぎたな」 耳に心地良い、低くて優しいゆったりとした声音に惹かれて、つい先生に視線を向けると。 言いながら先生は、表情をなくした顔を左の方へ向けて少し俯いた。 …違う。 口端がキュッと結ばれているのは、耐えてるんだ。 ……泣くのを? 彼女ちゃんは、その視線の先でやっぱり、嬉しそうに微笑んでいた。 先生が自分の方を向いて、嬉しいの? 先生は、多分、悲しんでいるのに? 無性にイラッとしていまい、でも。 同時に、すぐ隣にいながら重なり合わない関係に、心臓がギュッと痛くなった。
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