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4月:★1★ ラベンダーの男 #2
「最近出来た彼女に、入れ込んでんだってさ。足立君にも、春がやってきたのかあ」
ユアンが城崎と顔を見合わせて微笑みあう。
そんな会話をする2人の男の言葉には、羨ましいという感情よりも、ピュアな恋愛をする子供を見守るような微笑ましい感情が溢れていた。
おそらく冗談や嘘ではないだろう。
「ホッケ、加藤さんも食べる? 油が乗ってて美味しいよ」
城崎に誘われ、箸を取る。手付かずにいる半身を箸の先で、押して骨と身をばらけさせる。
足立の心を浮き足出させる彼女の存在。
その彼女を優先させた事実は、喉に小骨が引っかかったようにちくちくとさせる。
彼女...かぁ。
先日、私が好きだとか言ったくせに。別に彼女がいるんだ。
独占してるつもりが、そうではないことに気づいてしまい、寂しさに襲われる。
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