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「じゃあ君にとって、ここは天職なんだ」
「そうですね。天職です」
「でもそんな、乾の舞台が大好きな君が、ダンサーたちを首にするジャッジをするのは酷だね」
ため息混じりに彼は告げる。
城崎もすでに情報を握っている。それは、誰からの情報か、聞くまでもない。
茂木が城崎を巻き込んだのだろう。
ダンサーから慕われる城崎から、現場の意見を聞こうと、情報を流したのかもしれない。
ダンサーカットの件は、トップシークレットだが、演出家である彼には、折を見てきちんと話さなくてはならないことだった。
ただ、もう少し時間をかけて、タイミングを計りたかった。
呑んだ帰りのタクシー話すなんていうタイミングではなく、もっと別の場所を設けたかったのだが、仕方がない。
車のシートからすこし腰を浮かせて、城崎との距離を詰めた。
肩を寄せて、耳元へと囁く。
「出来れば、私の判断では選びたくはないのですが、そうも言ってられないので......」
致し方なく、城崎の言葉を肯定する。
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