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口の中でモゴモゴと呪文のように呟いた。
足立の目が覚める前に家を出た。
そのせいで、あの一夜がリアルな出来事なのか、判っていないのだろうか。
「まさか。響希、あの日の出来事を夢だとでも思ってるの?」
「う、うーん」
足立は、レモンを齧った時のような、なんとも皺くちゃな表情をする。
仕方なしに、ハイネックの襟元に指先を入れる。
セーターの襟をグイッと力強く引っ張る。
すると、鎖骨のあたりに散る、赤い痕が現れた。
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