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8月:★10★ 新井との祝杯 #2
ほんの数か月前まで学生だった彼は、いま、どういう気持ちで会社の指揮をしているのだろう。
最初に私と会った時に社長室で起きた出来事を思いだした。
もしかしたらあの時の彼は、自分が生きなければならないこの先の恐怖と戦っていたのかもしれない。
ずる賢い人間ばかりと出会ってしまって、同じ場所で生きる人間に、怯えていただけなのかもしれない。
一人でずっと戦ってきていたから....。
気がつくと、テーブルに置かれた新井の掌に触れていた。
手の甲を包むように手を乗せていると、「頑張れとか、言わないの?」と新井は私に尋ねた。
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