引っ越してきた少女

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引っ越してきた少女

「ごめんくださーい」 「はーい!」 愛里は 帰宅したばかりだった 見知らぬ主婦風の おばさんだった 「わたくしたち 隣に越してきました 鈴森と申します」 「あ!お隣の!ご丁寧にありがとうございます」 愛里は 土下座をしていた 「あ あの こちら 詰まらないものですが  どうぞ お納めください」 「はい! ありがとうございます!」 今度は立って 受け取り 軽く会釈をした 愛里の眼に 車椅子が映った この主婦は 愛里の視線に 気付いたようだ 「あ 娘の翔子です。仲良くしてやってください」 あ! この前の あの子だわ! 「ショウコさん わたし愛里 結城愛里っていうの   仲良くしてね!」 翔子は とまどった 普通なら 自分には 哀れみの眼を向けるはずなのに 愛里は 友達に接するように 話しかけてきたのだ 翔子は 車椅子を下げて 家に帰ろうと思った だが 翔子の想いとは逆に 手は  車椅子を前に進めたのである 「よろしく 愛里さん 愛情の愛に   一里二里の里でいいの?」 「うん! そうよ!ショウコは 羽の翔でいいのかな?」 愛里は うまく字が浮かばなかったが  なんとか伝わった 「うん! そうよ」 ふたりは 握手を交わした 「もしよかったら 話をして行かない?」 愛里は 翔子にいった 翔子は 母親を見上げた 母親は 軽くうなづいた 翔子の母 薫も少し驚いていた 天真爛漫という感じに見える 愛里を気にいったようだ 母親とふたりで 結城家の玄関に  車椅子ごと 翔子を持ち上げた 「後ほど、引き取りに上がりますので」 といい 母親は あいさつまわりを再開したようだ 愛里の興味は まず翔子の年齢 そして 学年 そして 行く学校 この三点だけだった 車椅子の事など なんとも思っていないのだ 愛里は 翔子をリビングに招待して 麦茶を持ってきた 「暑いから 麦茶でいいかな? いいかなって  今 これしかないんだよね」 「うん!ありがとう!ノド渇いてたから 頂くね」 一気飲みだった 愛里は 思わず拍手した 冷蔵庫のペットボトルをダッシュで 持ってきて 翔子のグラスに注いだ 「やだ はずかしいわ!ごめんね!」 と 翔子が言うのか早いか  一瞬で 飲み干してしまったのだ 愛里は驚きもせず 翔子に麦茶を注いだ そして 愛里は翔子にいった
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