第1章

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 赤ん坊の外耳は上に尖っていて、顔が自分の息子とソックリだったことにも驚いた。 「うちの子に、というか、夫にソックリ! ……こんなに似る偶然ってある?」  ついついジッと赤ちゃんを見つめた。 (………………)  今まであったことが成美の頭の中でグルグル回った。  赤ん坊人形を見せて、自分の息子だと言った沙良。  その頃は時期的に妊娠初期のはず。  隣の部屋から聞こえてきた男の声。  今にして思えば、夫の声に似ていた。  成美は隆の顔を思い浮かべた。  隣が越してきてから、煙草を買いに行くと一人で出て行く日が増えた。  子どもが生まれてから仕事が忙しくなって、深夜帰りや明け方帰りが多くなった。  中井沙良を話題に出すと、きまって異常に怒って中断させた。  そもそもこんな高級なマンションを買ったのに、隣の部屋に沙良の両親が訪ねてきたこともない、 (もしかして、買ったのは夫!? 会うのに楽だから隣の部屋に住まわせた? そして頭のおかしい女を演じさせ、さらに怖いことをわざと吹き込んで不安に陥れ、詮索する私を遠ざけた?)  成美は思わず沙良に詰め寄り、大声で問い詰めた。 「この子の父親は誰!?」 了
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