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清子は台所にあるテーブルの前の椅子に座り、お茶を飲んでいる。
アパートの通路に面した、台所の細目に開けた窓から、隣の部屋に引っ越してきた人の荷物が搬入される音、それに引っ越してきた人と大家さんの話し声が聞こえてきた。
「ありがとうございます。
私のような者に部屋を貸して頂いて」
「礼を言うなら、保護司の赤松さんに言いなさい。
あの方が紹介する人は、自分の犯した罪を償おうとする人だけだからね」
「そう言って頂けるだけでも、ありがたいです」
「それよりも、挨拶回りだけはしといてくれ」
「はい、分かっています。
大家さんに聞いた人数分の茶菓子、用意してありますから」
「それなら良いが。
町内会の決まりごとなんかは、隣の部屋の小野寺さんに聞いてくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
大家さんが帰って行く音、何時も突っかけている下駄の音が遠ざかって行く。
「アパートの人達に挨拶回りしてくるから、荷物を運び込んでおけ」
運送屋に声を掛ける声が聞こえたあと、清子の部屋の呼び鈴が鳴る。
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