2.薬は魔法か猛毒か

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「とりあえず1回カウンセラーの先生んとこ行ってみて」 あれからやっぱり、何度授業で当てられようが、どうしても教室では声が出せなくなってしまった。 数日経っても戻らない、しかし休み時間や放課後に井川達とは普通に会話できる俺の様子を見て、担任の先生にそう勧められた。 まあ、そうなるだろうな。 自分でも納得のいく事だから素直に従う事にした。 そして保健室に併設されているカウンセリング室へ週に何度か来ているカウンセラーの先生に相談する事になった。 理由は俺自身、何となく理解している。 声が出せない事はすでに担任から伝わっているから、それをちょっとぼかして伝える事にしよう。 「あの、クラスに好きな子がいるんです」 嘘は言ってない。何も。うん。 先生から視線をそらしつつ、恐らく顔を赤くしてそう話した。 最近、急に悪化して飛鳥の事を考えるだけで体温が上がる。気がする。 「それで、その子を意識するとドキドキして、あがっちゃって声が出せなくなるんだと思うんです」 もう目が合うだけで心臓破裂しそうな勢いなんで!と続けると、 最初に俺が室内に入ってきた時に見せていた真面目な顔から一転、先生は微笑ましいものを見る目になった。 「多分その内落ち着くと思うんで、だからとりあえずそっとしておいて欲しいんです」 親にも、他の先生にも理由は言わないでください。恥ずかしいから。 そう言うと先生は穏やかな表情で笑って了承してくれた。 「でも何かあったらちゃんと相談しにきてね」 恋愛相談にも乗ります。と笑う先生に見送られ、俺はカウンセリング室を出た。
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