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ガヤガヤと煩い教室も、彼を見つけると壁を隔てたかのように静かになる。
遠くなる音はまるで海の中にいるようだ。
俺を海中の魚にするのは、クラスメイトである飛鳥(あすか)だ。
飛鳥は名字だけれど名前っぽいから、はたから見れば名前で呼んで親しそうに見えるんじゃないかとか妄想する。
いや、めったに呼べないけど。
そんな彼の傍によると息苦しくなって上手く話す事すらできやしない。
女じゃないんだから、別に無意味に近寄っても大丈夫なのに。不純な動機なんて見透かされる訳ないのに。
話せないなら近寄らなければいい。見なければいい。
それなのに、ぱくぱくと酸素を求めて水面に顔を出さずにはいられない。
どんなに遠くとも俺の海には彼が居なければならないのだ。
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