1.人魚姫の夢物語

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まだ教室に人気は無く、部活の朝練中であろう数人の鞄が置いてあるだけだ。 このまま、誰か登校してきそうな時間になるまでどこかで時間をつぶしていよう。 特に用事の無い俺がこんな早くから教室にいるのは不自然だ。 そう考えて鞄を持って教室を出る。 「あれ斉木?どしたの早いね」 さいき、と同学年に何人もいる訳でも、かと言って病院なんかで呼ばれたら誰もがこっちを見る訳でもない、至って普通の名字を友人に呼ばれた。 あれからしばらく時間が経ち、校内にもちらほらと登校してきた生徒の声が増えてきた。 誰にも見つからないようこそこそしていたけれど、そろそろいいだろうと俺も今登校してきた風に装って歩いていると、丁度よく友人と出会った訳だ。 ちなみに彼もまた一般的な名字で井川(いがわ)という。 「あ、うん。数学の課題解んなくて誰かに聞こうと思って早めに来た」 多分俺今日当てられるから。と用意していた言い訳を使った。 そっかーごめん俺も解んね。と返す彼と一緒に再び教室へと入る。 そして2人でくだらない話をしながら数学の得意な友人の登校を待つ。
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