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いつ飛鳥が登校してくるかと内心ドキドキしていたが、それよりも前に友人が来たので2人してノートを写させて貰った。
こっちの友人の名字は数井(かずい)。ここからもう、数学が得意そう。
実際は得意だからそんなイメージが浮かんだんだろうけれど。
そして井川と一緒に感謝の念をこめて彼を拝み、気持ち悪いと言われる。
こんなもんだ、俺の日常は。
特別大人しい訳でもないが目立ちもしない。
ほどほどに友人も居て、成績だって良くも悪くもない。
真ん中ぐらいが丁度いい。そう思っていて事実そんな位置にいる感じ。
それが俺。
惚れた欲目かキラキラして見える、自然と目立っている飛鳥とは全然違うグループに属している。
あいつマジ王子かよ。いっそ神々しいよ。
おはようと挨拶したぐらいで、それだけ嬉しくて息が詰まるような。
ドア近くの数井の席に集まっていたおかげで今日もその苦しくも幸せな感覚を味わうことが出来た。
そしてそのまま彼の行方をこっそり目で追って、机の中の手紙に気が付いたことを確認する。
紙を開くと……あ、引いてる?
一瞬固まり、それから周りをキョロキョロ見渡している。
そんな彼と目が合わぬよう視線をそらした。
彼がこちらに気が付くはずもなく、近くにいた彼の友人に手紙を見せている。
……大丈夫。普通にしていればバレない。俺が出したなんて解る訳が無い。
イタズラだろとか笑い声が彼らの方から届く。
「何だぁ?」
井川が向こうが気になるのかあちらを見た。数井も。
そうすると俺も見ないわけにはいかなくなる。不自然だから。
不思議そうに装って飛鳥の方を向いた。
ふいに彼もこちらを向き――俺は熱に浮かされる。
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