0人が本棚に入れています
本棚に追加
「だれだ?」
誰何の声に視線を向けると、あの男がこちらに向かってきていた。でも僕の顔を見ると、いやらしい嗤いを浮かべて、
「よく来たね」
そう手招きした。
僕は警戒の色を浮かべつつも、男に促されるまま、部屋の中に入っていった。そして母さんの無事な姿を認める。母さんは僕の姿を見ると、涙を浮かべた。余程、怖い思いをしたのだろう。
僕は母さんを安心させる為に、笑顔を見せる。
「ほら、私の言った通りだろう?」
その時、男が母さんに近付いて声をかけた。剰え、母さんの肩に腕を回している。それを嫌がる素振りも見せず、母さんは男の話に耳を傾けているのだ。
「家に帰ろうとした君を引き留めて正解だったよ。帰ってこない母親と、不審な行動をする隣人。君から聞いた息子くんの傾向から、彼の妄想が止まらなくなるシチュエーションだと思ったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!