第1章

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「だれだ?」 誰何の声に視線を向けると、あの男がこちらに向かってきていた。でも僕の顔を見ると、いやらしい嗤いを浮かべて、 「よく来たね」 そう手招きした。 僕は警戒の色を浮かべつつも、男に促されるまま、部屋の中に入っていった。そして母さんの無事な姿を認める。母さんは僕の姿を見ると、涙を浮かべた。余程、怖い思いをしたのだろう。 僕は母さんを安心させる為に、笑顔を見せる。 「ほら、私の言った通りだろう?」 その時、男が母さんに近付いて声をかけた。剰え、母さんの肩に腕を回している。それを嫌がる素振りも見せず、母さんは男の話に耳を傾けているのだ。 「家に帰ろうとした君を引き留めて正解だったよ。帰ってこない母親と、不審な行動をする隣人。君から聞いた息子くんの傾向から、彼の妄想が止まらなくなるシチュエーションだと思ったんだ」
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