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背後で、母さんが狂ったように悲鳴を上げている。
最初は「何をするんだ」とか「やめてくれ」とか言っていた男は、今では静かになり、真っ赤に染まった身体が時折、ピクッと動くだけになっていた。もう大丈夫だ。
僕は漸く立ち上がると、母さんを振り返った。母さんは掠れた音を口から漏らす。怯えているようだ。僕は再び安心させるように、笑顔を浮かべた。
「もう大丈夫だよ、母さん。さあ、家に帰ろう」
もし、敵が残っていたとしても、雑魚ばかりだろう。ボスは倒したのだから、避けながらでも脱出出来る筈だ。
僕は震える母さんの手を引いて、出口に向かった。これでまた、いつもの母さんと二人だけの生活に戻れる。
でも外に出て分かった。あの男はボスじゃなかった事を。
警官の姿をした敵が二人、僕達を待ち構えていたのだ。唯一の武器は、あの男に刺さったまま。
再び母さんと引き離される。僕は警官のフリをしている男達に従って、赤いランプを光らせている車に乗った。
次はどうやって脱出しよう。
そんな事を考えながら……。
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