第1章

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そのうちに寝ていたらしい。浅い眠りの中で、玄関からの音を聞いた。扉の開閉音。ババアが帰ってきたんだ。 でも、顔を見せてなんかやるもんか。アイツが飯を持って謝りにくれば良い。 僕は布団の中でまんじりともせずに、母親が上がってくるのを待った。でもそんな気配は一切なく、気付けば閉め切ったカーテンの向こうに、朝の気配を感じていた。 マジで何なんだ。 ムカついた僕は、乱暴にドアを開くと、ドスドスと足音も荒く階下に下りていった。そして母親の部屋のドアを開く。 しかし、そこには誰もいなかった。母親の部屋は畳だが、布団すら敷かれていない。 台所にも向かったが、そこにもいない。一人分の食事が置かれているが、内容的に昨夜のものだろう。 時計はまだ早朝を示していた。
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