第1章

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あのババア、外泊か? そんな事をする筈がないのは、僕が一番よく知っている。父親がいなくなってからは、買い物に行く時すら、僕に報告するような母親だ。それが黙って外泊する筈がない。何かあったんだろうか。 心配なんかはしていない。でも何があったのかを知る必要がある。 そう思い、自分の部屋に戻ると、カーテンの隙間から隣の様子を伺った。 隣の家の庭が、ちょうど僕の部屋から見えるからだ。 その庭を挟んで隣の家があり、右側が玄関で、道路に面している。庭の左側にはガレージがある。 昨夜の片付けはまだしていないようだ。バーベキューをしたのが見て取れる跡が、そのまま残っている。 住人はまだ寝ているだろう。 そう油断していた。 上げた視線の先、二階の窓から、こちらを見ている女の姿を見つける。僕は慌ててカーテンを閉めた。
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