第1章

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軍手をして、一輪車に昨日の残骸を放り込んでいる。消し炭や紙皿、食べ残しといったものだ。その中に、何か白く長いものが見えた。僕はそれが気になり、目に力を入れて凝視する。 その一端には、細い枝のようなものが数本付いていて、まるで人の手のように見える。いや、人の手にしか見えない。反対側は消し炭に埋もれてしまっているが、これは人間の肘から先ではないか。 そう気付くと、僕は他の場所にも視線を走らせた。 ガレージの前には、大きな黒いゴミ袋。そして立て掛けられた、黒い汚れの付いたチェーンソー。それ以外は、不審なものはない。 そこで、再び視線を男に戻す。すると男は、チラリとこちらに視線を上げた。そして一輪車の上のものを、布で覆い隠す。その布の柄には見覚えがあった。母さんがいつも着けているエプロンの柄だ。 上げられた男の視線以上に、その事が僕を怯えさせた。
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