第1章

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どう考えるべきか。 男の視線を避ける為に一歩下がると、顔を上げる。すると、またあの女が、こちらを見ていた。 僕はカーテンをきつく閉じると、今見た事を咀嚼しようとした。 まずは、あの女について。 表情までははっきりと分からなかったが、確かにこちらを見ていた。あの、冷めた視線。悪意をベッタリと張り付けた顔。 僕に対して、何らかの害を与えようとしているのだろう。 そして、あの男とあの腕。チェーンソーとゴミ袋。 誰かを殺した跡だろう。 そうか、人殺しの一家が隣に引っ越してきてしまったんだ。もしかするとカニバリズムかも知れない。そして恐らく母さんは、捕まったか、最悪、死んでいるのかも……。 そこまで考えて、ふと思い付いた。あの男の行動。 僕が見ている事に気付いて、母さんのエプロンを見せるかのように、一輪車を覆った。挑発しているのだろう。 だとしたら、母さんは生きている。
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