第九章 二十数年前の亡霊

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   この先は警察も知る、取り調べでの供述の変化である。  つまり下園 あずさは、失火ではなく放火の罪により逮捕される事となる。当然ながら、二十数年前の事に関しても再度聴取を受ける事となる。  ただしそちらに関しては、どのような罪状となるのか。その罪状によっては、時効の成立の可能性もあるかもしれない。  しかし下園は、ここで全てを自供した。  これにより、何か解き放たれたような顔をしている。それだけ、自身が抱え込んでいた十字架は重かったという事だろう。  松本は、そこで状況を振り返ってみた。  彼女が、そこまで語る必要があったのだろうか。実際問題として、酒出の追求に対しシラを切り通す事も出来たようにも思えてくる。  満喜の亡霊を名乗る者。  おそらくは、和泉本人が何かしらの手段で女性の声色を作ったか。仲間のミレイなる人物が、その役割を担ったといったところであろう。
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