第三章 ヒットマン

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   ならばと、ノートに目を通し終える前に。食事を終えようと、二人は慌てて食事のペースを上げた。  しばしの沈黙が、店内に流れる。  いつも通り、気を利かせた女将と板前は、ある程度の酒と肴を出して店の奥へと引っ込んだ。そこで、二人は食事を終える。  そして松本は、気が気じゃない状態の中、ビールを一口飲んで食事の後味を口の奥へと流し込んだ。 「なぁ、菊乃ちゃん。今回のヤマに関し、和泉の野郎の仕業とは言い出さねぇのか?」 「事件の発生時、マスコミがそうした雰囲気を出していたので考えました。ですが今回のケースは、和泉らしく無いと思いましたので」 「らしくねぇか。どの辺りが、奴らしくねぇと思ったんだ」 「一番の理由は、事件前に警部補に接触して来なかった事です」 「そうだな。これまで奴は、俺に挑戦状を叩きつけてきた。今回は、それがねぇからな……」  酒出は、含みのある言い方をした。
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