第三章 ヒットマン

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   液晶画面には、廃業した冷凍工場や食品会社が表示されている。  そのどれもが、県警の捜査員が捜査済みであった。  どの工場も、一ヶ月以上稼働していない。つまり、工場内に通電していない為。人を氷漬けにする事はおろか、そうした遺体を保管する事も出来ない。  遺体は、放火の直前まで氷漬け状態だったのだ。 「警部補。ですから、これらの工場は……」 「それらには、本当に何も無かったのか?」 「ですが、県警の捜査員の調べでは」 「一軒一軒、工場内まで確認したのか。工場の稼働だけ確認し、実際に中は見てねぇんじゃねぇのかな」 「あっ、それは……」  松本は、反論出来なかった。  稼働していなければ、冷凍も保管も不可能という先入観が彼女にはあった。それはおそらく、県警の捜査員も同様だろう。  県内全域の廃業した工場を回るだけでも、それ相応の人手と時間が必要になってくる。
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