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松林を迂回し、真新しい住宅地が目に入ってくる。
その瞬間、彼の足は止まった。
「良かった……」
彼の購入したマイホームは、その一画の中で十字路の角地に建っている。そう、迂回した松林の一部を開墾し、宅地にしたところに建売住宅が建てられ販売された。
その一軒を購入し、マイホームはその時の姿のまま残っていた。
一般道を挟んだ向かいには、これから開墾予定の松林が存在する。火災は、その更に向こうで発生しているようであった。
家の前では、妻と娘が不安そうな顔で空を眺めている。
「あっ、あなた……」
「あれは?」
「松林の向こうの畑の側にある家で、火事になったみたいなの」
「向こうって、畑なんかあったか?」
妻には呆れられたが、考えてみると半年前に引っ越してきてから。松林の向こう側には、一度も行った事がなかった。
その為、どのような場所か想像も出来ない。
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