プロローグ

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   妻によると、松林の向こうは農地になっており。隣の八千代市との市境まで、農地や小さな林が広がっているという。  そうした中に、昔からの農家の家が点在しているのだそう。  火災になっているのは、そうした家の一軒だろうか。ひとまず、自分のマイホームと家族は無事だったが、完全に安心出来る状況では無い。  風向きは、その燃えている方角からこちら。  自分たちのいる場所が風下である限り。松林に引火すれば、我が家とて無事には済まないかもしれない。 「消防署には、連絡してないのか?」 「さっき、私も電話してみたけど、少し前に通報が入ってるって。ただこの辺は、どこの消防署からも距離があるから、少し時間がかかるかもって」  妻の言葉に、サラリーマンはやり切れない憤りを感じる。  次の瞬間、ようやく辺りに消防車のサイレンが響き始めた。      
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