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布団を被っても聞こえてくる怒鳴り声。たまに何かがしゃんって大きな音も聞こえてきた。
二人の怒鳴り合う言葉の中に、離婚って言葉が聞こえて、どうしていいかわからなくて、怖くて、もう聞きたくなくて、静かに家を出た。
玄関の前で、パジャマのまま体育館座りをして、声を出さないで泣いてると、おじさんが僕に気付いて小屋に入れてくれた。
そんなかっこで寒かっただろって、牛乳を温かくして、砂糖を入れて飲ませてくれた。
僕は、おじさんにしがみついて沢山泣いてしまった。
おじさんは、僕が落ち着くまで、ずっと背中を撫でてくれてた。
少し落ち着いてから、おじさんは僕の話を聞いてくれた。
その時、初めておじさんが自分の事を話してくれたんだ。
おじさんには奥さんと女の子が居て、家族の為にって、僕のお父さんみたいに沢山仕事を頑張ってたんだって。
頑張って頑張って、社長さんになったんだって。
でも、仕事を頑張ってるうちに、奥さんと女の子と一緒に居る時間が少なくなって、とうとう二人に嫌われちゃったんだって。
奥さんと女の子が居なくなって、やっと大切な事に気付いたって、凄く寂しそうに言ってた。
何の為に自分が頑張ってるのか、頑張ってるうちに忘れちゃってたんだって。
いつもろくに帰らなかった癖に、帰って家に二人が居ない事が悲しかったって。
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