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藤澤は休日を利用してこの2日間に宿泊した人達の名前を打ち込んでいった。試しによく利用してくれる大阪の山田なにがしの名前を入力してみる。モニターには最初に利用した日から現在に至るまでの利用来歴、誕生日、住所、勤め先、電話番号、長い付き合いで集められた家族や趣味まで書き込まれている。この調査から、この2日間にこのホテルに宿泊した新規の客数は51人であることが判明した。さてその後はどうする。ホテルマンである彼が51人を探索する事は難しく、山形警部に頼んでも、個人の遊びに乗ってくれるかといえば疑問であり、おそらく取り付く島も無いだろう。
彼に出来る事は宿泊帳に書かれた51人の住所に、お礼と今後の利用を願う葉書を出すことしか思い浮かばなかった。藤澤は国生に『裏組織』なるものの存在を想定して、遊びがてらの調査を行っていることを語り、51人の客に葉書を送ることの許可を仰いだ。国生はホテルに迷惑をかけないこと、客先に出す葉書を国生が検閲する事を条件にそれを許可してくれた。
宛て先不明で藤澤に戻ってきた葉書は8枚であった。330名が8名に絞られた。素人探偵にしては上出来といえるだろうと藤澤は思った。彼はこの8人が記帳した自筆の宿泊カードをコピーし、この日のフロントに立った職員に6月17、18日に不審な挙動を伴う客がいなかったかと尋ねてみた。流石に5ヶ月前の記憶はあやふやどころか、記憶にも残っていないといえるべきものであった。自分でできる範囲の調査はここまでだ。
相川との話
11月25日に再び相川からの電話。12月1日に東京で同窓会があるから、2日にお会いしたいとの連絡であった。彼女の予定は午後に東京に着いて、友人達と落ち合った後に会場に流れ込み、夜遅くに藤澤のホテルにチェックインするというものであった。時間は何とか作りましょうと返事を返して、藤澤は愛くるしい相川の姿を思い浮かべていた。あの時はお互いの空間距離は遠かったけど、今度は目の前で会える。それは嬉しいことだけど一体どんな性格をしているんだろう。見掛けと同じで心まで可愛いといいのだが。話とは彼女が先ほど体験したお客様の不審死に関する色気の無いものだろうけど、新しい世界に目を向ける良い機会にはなりそうだ。
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