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「相川君が泊まるの。競争相手が多いらしいな。そのような噂が走りまわっているようだ」と、国生は意味ありげな笑いを浮かべて休日の変更を許可してくれた。
「それにしても藤澤君をご指名とは。そんなにもてる男だったのかな。まあ、僕の若い頃には及ばないようだが」と屈託無く笑う。
藤澤は相川が不審死した客の一部始終につき合わされたこと、ホテル死が増加していることを研修で聞き知ったこと、この二つを結びつけて、『裏組織』みたいな集団の存在を想像し、その想像に自分も乗せられたと語った。自分が今まで調査してきたことは彼女が言った『裏組織』の言葉が頭を離れなかったことが端緒だったことも附け加えた。。
「何だ、面白くもない。相川君は君のフェロモンで寄ってきたのではないのか」
「それであれば、とても嬉しいのですが」
「不審死の話なら、私も立ち会いたいところだが、相川君には別の思惑があるかもしれない。後で話してくれることを条件に休日振り替えを許可しましょう」
12月2日
九時に相川の姿がエレベータから吐き出されてきた。一瞬怪訝そうな顔つきで見合った二人は次の瞬間には豊かに笑いあった。
「あれ、相川さんですよね。相川さんってこんなにも綺麗な人だったんだ。研修のときは可愛さばかりが目立っていたようだったけど」
「流石、ホテルマン。お世辞がとてもお上手です」
「そんなことありません。本当に見違えました」
「お化粧は七難隠すというでしょう、多分、お化粧がうまくなったからでしょう。藤澤さんはお化粧もされてないのに素敵ですわ」
「有難うございます。朝食は済まされましたか」
「はい」
「お話はどこで?」
「ここでも構いませんが、ここだと何時もの仕事癖が出て藤澤さんが困りそうですね。外に出ましょうか。先に上司の方々に挨拶して、荷物はフロントに預けておきます」
挨拶を済ますと二人はホテルから近くにある喫茶店に足を踏み入れた。
「帰りはどうされますか」と声をかけると
「今日の3時の羽田発の飛行機を予約しています。時間が随分余りそうで、どうしようかと思っています」
「相川さんが良ければ羽田まで送らせてもらいますよ。早く家に帰るよりも楽しそうだ」
「ご迷惑ではありませんか。そうして貰えるとうれしいです」
「それで決まり。所で、昨日の同窓会は如何でした」
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