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「…と、まあね。こんな出会いがあったんだよね」
「うん。まあ俺はいんだけどさ。この話聞くの何回目だよこの野郎のろけかのろけー!」
「俺はいいって言ってる割に良くないんじゃん!ってあただただ!頭ぐりぐりするなー!」
私の頭を散々ぐりぐりし終えた成瀬は、ふん、と満足した顔だった。
なんか悔しい。
「つか無駄に長い話だよな、それら。いつ聞いてもツッコミどころ満載だし」
「む…」
確かにツッコミどころ満載なのは認める。
まずカミヤハルヤセンパイは何故電車が来たのに私に乗ろうと誘わないで一人で行ったのか。そして電車に気付かないくらいフワフワしてセンパイに見惚れてた私もキモい。そして何より…
「おまえ、名前知られてないんじゃん?」
「そ、それは…」
そうだ。名前を言えずに私はセンパイと喋るチャンスを失った。
いや、この後もたくさんお礼を会いに行くついでに名前を言って何か進展を、と望んでいたのだけど…
『こ、ここここんにちは!この前は助けてくださり……』
『あ、あの。キミは…?誰だっけ?』
『そうよ。知らない子がハルヤに近づくなんていい度胸ね』
『やってしまいましょう』
『『そうね…』』
『しっ、失礼しました出直します!!!!!』
と、まああの日から一週間も経っていないうちに会いに行ったのにもかかわらず忘れられていて、周りのハルヤセンパイのファンらしき方々に怖い目で見られたため逃げてきてしまった。
「そして今に至ると。」
「うん…悲しかったし怖かったけど、あの優しさを知ってるから私は見てるだけで幸せ」
「おまえってやつは……」
馬鹿だなあ、と言いたげなため息を漏らしながら成瀬は私の前をずんずん歩いていく。
「ちょっと待ってよー!」
「おばかさんの相手はしてらんないぜ~」
「ヒッッドーイ!このどあほ!」
…この後大ゲンカになったのは言うまでもない。
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