第一章

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…揺れる体に、ぶつかる体。リセッシュしたくなるような臭い。おじさま方の首に滴る汗。席の取り合い。朝だからか化粧がばっちし決まっているOLらしい女の方々。ひたすら携帯とにらめっこしながらイヤホンに手をかける学生たち。 通勤ラッシュがやばめの電車にて朝の通学、真っ只中でございます。 「はわああ~…ねんむ…」 iPodにイヤホンを挿し、歌を聴く準備をしながら私は思わず大きなあくびをしてしまった。耳にイヤホンをしていると自分の声が聞こえにくいからついつい声が大きくなってしまったりする。 が!今のあくびは抑えた。(つもり) 「うわあああー…ちょ、ちょっと花織…あくびでかいって!」 「…はひ?」 ワイシャツの袖を引っ張りながら声をかけてきた成瀬に私はイヤホンを外し返事をする。 これは毎朝の恒例行事とも言える。 周りの目線を気にして恥ずかしそうにする成瀬の顔がなんとも言えないほど面白い。 「その間抜けな声もでかいんだよ!ったくよ~自分の声量自覚してくれよな…」 「ごめごめ~」 適当に謝罪をし再びイヤホンを耳に戻す。 なぜか朝から音量マックスでベートーヴェン作曲の第九を聴いている。迷惑なやつなんだろうな私は、と最近自覚してきている。
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