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「ゴメン、俺がキミをここで降ろしちゃったから… でもここで降りないとキミ、やばそうな雰囲気のとこまで来てたからつい」
「え……」
この人、私が痴漢されてるの気付いてくれてたんだ…
というかまず同じ電車だったのか…
「迷惑だったらホントゴメンね。
今のやつ、連続痴漢魔でさ…
うちの学校の生徒、これまでも何人も被害にあってて。被害って言っても、みんな女の人だと思って多少手が体に触れても偶然だと思って見過ごしてたみたいなんだけど、キミみたいにがっつりやられたのは初めてだった。
俺もあいつを女だと思っててね。でもさっき試しに髪の毛引っ張ってみたらこの通りで。だからそのままわめかれないように口を塞いで腕を曲げてやって下車したわけなんだ。」
そう言いながらセクハラ男がつけていたと思われるウィッグを右手に持ち、申し訳なさそうに笑うセンパイ。
キュン…
な、なんてかっこいいの…
こんなイケメンに助けてもらえるなんてしあわせ……
優しすぎる…!!!
「あ、ありがとう…ございました…助けていただいちゃって」
「いや、礼には及ばないよ。
俺、カミキハルヤ。キミと同じ花丘高校の2年生です。よろしくね」
「あっ!私は、えっとあの…」
センパイの自己紹介をぽけ~っとしながら聞いていた私は自分も名前を教えればいいのになぜかアタフタし言えなかった。
「ごめん!俺今日入学式の準備あるから先行くね!気をつけておいでね花織ちゃん」
『閉まるドアにご注意ください』
「あっ…!えと、は、はい!ホントにありがとうございました!」
語尾を言う頃にはもうセンパイの乗った電車のドアは閉まっていた。
「……ん?」
なんか嫌な予感がする。
背中に冷や汗がたらりと垂れるような、そんな感じが。
「……え?で、電車…!!!!乗れなかった!!!!
入学式遅刻!!!!」
ーーーーー……
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