第1章

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「どんな感じだい?」 刑事は鑑識に声を掛けた。 「どうもこうもないですよ。 見て下さいこれ……」 壁にくっついた男の遺体、後頭部からは釘の先が出ている。 「酷いな、これは……」 刑事は顔を渋め、 「おい、佐久間、隣の住人はどうなってる?」 メモを取っている若い刑事に声を掛けた。 「それが……」 佐久間は少し躊躇いながら、 「隣には誰も住んでおりません。 誰かが入室したという痕跡もありません」 「はぁ?どういう事だ? このはみ出ている釘は隣の部屋から出てるんじゃないのか?」 佐久間はそれ以上答えられなかった。 刑事は苛つきを顔に出し、 「おい!鑑識! もう、この死体どけてもいいな!」 「は、はい」 鑑識の声を待たずに、遺体を壁から引き剥がした。
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