第1章

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遺体の目はポッカリと穴が空いていた。 釘は壁の向こうから出ている。 「隣の部屋はいつから空室なんだ?」 静かな口調で聞いた。 「も、もう五年前から空室だそうです」 佐久間は苛ついていた先輩刑事に緊張しながら答えた。 「五年前には誰が住んでいた?」 「その住人も亡くなっています」 「誰が住んでいたんだと聞いているんだ!」 佐久間は怒鳴り声にビクっとし、気を引き締め直して答える。 「顔に五寸釘を刺されて死亡しており、事故なのか事件なのか自殺なのかも判明しておりません。 身分証も保持しておらず、アパートの契約も偽名だった為、身元不明の迷宮入り事件となっております」 「ふむぅ~、同じ様に釘を刺された死亡事件……」 刑事は壁を見詰めて考え込んでいると、 クスクスクス 壁の中から笑い声が聞こえてきた。 「おい!この壁を掘り起こせ!」 急な要求に誰も返事をしない。 「佐久間も鑑識も、全員で掘り起こせ!」 今日一番の怒鳴り声に、 「は、はい!」 全員が一斉に返事した。
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