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『あのイマダです。ダ、です』
『細かいことはいいんだよ!俺は志摩 マサユキ。よろしく』
『い、今田 太一です…』
彼は物凄く笑顔で土鍋を持っていないもう片方の手で僕の手を掴んだ。しかも痛いくらいにブンブン振り回してくる。それにあのMはマサユキと書かれていたのか。なんだ、外人じゃないじゃないか。
僕はホッとするのと同時に、新たな不安に見舞われた。これから僕はこの青年と仲良くできるのだろうか。見た感じカメラマンとか
、かな?
『そうだタイチ!引っ越し祝いしようぜ!鍋パだ!』
『は?』
僕はどこから突っ込んでいいのか分からず、思わず口を半開きにしたまま情けない声を出してしまった。引っ越し祝いって、自分が引っ越してきたんじゃないか。しかし彼は僕の返事を待たずして腕を掴んだままどんどん階段を登っていく。いやいや、ちょっと待ってよ。
『あー、まぁ、座れ』
『い、いいの?』
『なんだ、キンチョーしてんのか?女の部屋じゃあるまいし』
『いや、そういう意味じゃなくて…』
僕は少し不安だったが、彼の気迫に負けて部屋に上がった。お邪魔します、と言って部屋を見回すとまだ山積みのダンボールが部屋の隅に置かれている。壁には知らない海外のバンドのポスターが貼られていて、何故か不釣り合いなちゃぶ台が部屋の真ん中に設置してあった。
『とりあえず鍋パだな』
『大丈夫?手伝おうか?』
『いや、任せろ。俺はアメリカじゃ鍋武者と呼ばれてたからな』
鍋武者?それってもしかして鍋奉行の事かな…
『ちょ、ちょっと待って!』
彼は土鍋のシールを剥がすといきなり白い米を投入しているではないか。いやいや、鍋パって土鍋でご飯を炊く事を言うんだっけ?違うよな。うん、僕の記憶が正しければ絶対違う。
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