お隣のおばさん

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『ミノムシ?!』  土の中から現れたのは、ママの服がグルグル巻かれて、上から透明のビニールでグルグルになった、大きなミノムシみたいなものだった。  おばさんは、ものすごい顔でそれを引っ張ってる。なかなか土から出せないみたいだ。 ――――重いの?!おばさん?ソレなぁに?  おばさんの顔が歪んでいく……。とてもとても近くに居たくない顔。 「チッ!重いわねえ。もうちょっと軽くなったと思ってたのに半年も経ったじゃないッ……のっ!」  おばさん。怖いよ。何それ……。  僕は、喉がカラカラになって、お腹の上の辺りが気持ち悪くて、ちょっとずつ後ずさりした。  《ミノムシ》を土の中から半分出したところで、おばさんはしりもちをついた。雨が降って来て、僕は濡れないから気が付かなかったけど、おばさんは、びちゃびちゃの泥だらけで、昔話で聞いたヤマンバみたいだ。 「くそっ!」 とおばさんはとっても低い声で言うと、また掘った穴に戻る。 《ミノムシ》が入ってた穴は、子どもの僕が腰まで入るくらい掘ってあった。少し上から飛んで見ると、楕円形の池みたいに見えて、僕の背丈を2かけた位の大きさだった。   泥だらけの髪の毛もグチャグチャになったおばさんはそれでもまだ穴を掘る。 《ザシュ!ガツッ!ザシュッ!ガッガッ!》  雨音が大きくなって、シャベルの音はかき消される。 《ガツッ!》  またさっきと同じような音がした。  僕はまた上から見ると、また《ミノムシ》だった。  今度のは泥だらけで、泥水に濡れたその《ミノムシ》はさっきのより少し小さい。白っぽい布に泥水が染みこんで茶色で、本物の《ミノムシ》みたいだ。こっちは軽いみたいだ。  それをまたおばさんは引っ張って穴から出して、引き摺ってさっきのミノムシと並べる。  さっきのミノムシも完全に穴から出して、ビニールシートをかけたて、穴に土を埋め戻した。土が足りないからへこんでる。  それが終わるとおばさんは、怖い顔のまま笑った。  それから、何かに気が付いたように、花壇のレンガを何個かそのシートに投げる。風が出てきたから飛ばないようにしたんだ。  おばさんは踵を返すと、辺りを見渡して、いつもの顔になってお家に入っていった。  
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