お隣のおばさん

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 僕はビニールシートの下のミノムシが気になったけど、怖くて見れなかった。 ――きっととっても怖いものだ。見たらいけないものだ。  気が付くと僕の目から雨より大きな涙がボロボロ出てきた。  何で涙が出るのかな?  僕は怖いのにそのビニールシートの傍を離れられなかった。  そのうち少し風も雨も弱まって、窓から目をギラギラさせたおばさんの顔がこちらを見てることに気が付いた。  その頃にはもう真っ暗な夜になっていた。  僕は眠くならない。前は、もう9時になると眠かったのにこの体になってから眠った事はない。  あちこちのお家の電気が消えて、ほんとに真っ暗な時間になってきた。  静かなのに、遠くから近づいてくるヒソヒソ声がした。  おばさんと、お巡りさんの声だ。あと、お姉ちゃんの先生だ。 「悪いわね。さすがに私じゃ、これ以上は無理だったわ」 「そりゃそうですよ。僕のほうはスーツケースに入れてましたけど。それでも、部屋から出すのは重かったですよ」 「俺は掘り返すの大変でしたよ。交番の裏ですからね」  みんなニヤリと笑っている。 「ここから4、50分のとこにいい工事現場があって。今中断してるんですよ。調べたら、そのままになるらしいです。どうも、地盤調査で引っかかって建設がなくなるからそのままに……僕らツイてますよね!」 「シッ!せんせ!静かに!ご近所に聞かれたら私が困るんだから!」  そう話すと3人は庭の大きいミノムシを、紐を出して敷物でぐるぐる巻きに縛り上げた。  小さいミノムシは、物置から違うビニールが出てきてそれに包れて、紐で縛り上げられた。  《コトリ》  小さいほうを持ち上げた時、何か白いものが落ちた。    誰も気が付かないみたいだ……。  いつもは拾えない、触れないけど……手を伸ばしてみた。 『取れた!!』  なぜだかわからないけど、僕は拾ったものをポケットに大事にしまった。
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