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絽の着物に初めて袖を通した日 まだ夏が来る前の うっすら汗ばむ五月雨の日だった 淡い水色の単は、それはそれは綺麗な綺麗な夏物で 透き通る淡い桃色の襦袢が妙な色香を灯してた 細い横縞に抜かれた絽の生地が 息を飲むほど艷めいて 可愛らしい色合いが不釣り合い でもその不釣り合いが綺麗だと思った 少しの躊躇いと、大きな高揚感 博多織の羅の帯が、シャキッと鳴った時 私は顔を上げた 躊躇いなんてもう何処にもなかった ただただ、真夏の陽射しが待ち遠しかった
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