第1章

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第1章

 TV番組を録画したら、何故か途中からニュースに切り替わった。  地震や台風などの際に差し込まれる、特別報道番組という奴だろうか。  いったいどこで何が起きているのか。気になってそのまま録画の先を見進めると、その内容は、特に大被害という程でもない交通事故のニュースだった。  即死の報道こそされていないが、重体の怪我人が出ているレベルなので、たいしたことがないと言うのは語弊がある。だけど何十人もの犠牲者が出ているというならともかく、このくらいの事故は、番組の途中で臨時ニュースになる規模ではない。通常のニュース番組でざっと流すくらいのものだ。  いったいどうしてこの事故が、臨時ニュースで流れているのか。  首を傾げる俺の目に、テロップで画面に現れた被害者の名前が飛び込んだ。  そこに示されているのは友人の名前だった。顔写真こそ公開されていないが、名前の漢字も隣に添えられた年齢も間違いない。  あいつが事故に? しかも重体?!  咄嗟にケータイを取り、登録してある友人のナンバーに電話をかける。  後々考えれば、交通事故で重体の人間が自分の携帯に出らせる訳もないのだが、ともかくこの時は他の何も考えられず、繋がれと念じながらコール音を聞いていた。 「…よぉ。久しぶり。どうした?」  電話ははあっさりと繋がった。そのことに安堵し、ぐったりと肩を落とした俺に、電話越しに友人の声が投げかけられる。  そいつにニュースのことを話そうとしたが、赤の他人とはいえ、同姓同名同年齢の人間が事故で重体なんて話を聞かされたら、あまりいい気分にはならないだろう。  そう思い、あえて真相は伏せ、適当な言葉で電話の理由をごまかした。  その日から数日後、別の友人経由で、この時連絡を取り合った友人が交通事故に遭ったことを聞いた。  幸いにも命は取り留めたが、病院に運びこまれてからは、およそ丸一日、意識不明の重体だったらしい。  重体の事故…まるであの日のニュースのようだ。そう思ったが、交通事故なんてよくあることだから、この近日中に同姓同名の人間が事故に遭うだなんて、凄い偶然もあるものだと、この時はただそれだけを思った。  それから何ヶ月が経った日。
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