優しさ ∝ 気持ちの変化

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裏通用門から学内に入り、真歩は薄暗い通路を数学図書館に向けて歩いた。 ダンスで動き回った後だから身体がポカポカしていてもいいくらいなのに、最近の冷え込みはそれを上回るようで、真歩は身震いして上着の前をギュッと締め上げた。 もう慣れたもので、周囲に誰もいないか確認した後、閉館した数学図書館の脇道に入る。 狭い建物の間を抜けると、うっすらと窓から光が漏れているのに気付く。 その薄暗い光をたよりに、真歩は談話室の窓を開けた。 遮光カーテンが一瞬ひらっと舞い、談話室の照明が明るく入口を照らす。 真歩はサッと中に入って、窓を閉めた。 「おつかれ」 向井が分厚い本を読みながら、ぶっきらぼうに真歩を一瞥した。 「どうも」 真歩は短く返事をして、向井の斜向かいにある真歩の定位置に荷物を置く。 本を読んでいる向井を見て、真歩は思わず目を瞬いていた。 向井の腰に薄いブランケットが巻かれていて、足には温かそうなスリッパを履いている。 そのスリッパがモコモコで、なんともいえない可愛さをアピールしていた。 確かに今日は冷え込むけど‥‥‥。
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