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毛布から顔がやっと出ると、談話室の明かりは消えていて、自動販売機の明かりに照らされた向井が椅子に寄りかかって目を閉じたのが見えた。
なんだろう‥‥‥。
向井って、こんなに優しかったっけ‥‥?
真歩が居るソファは自動販売機の陰になっているせいで、ちょうど良い暗がりになっていた。
その暗さに紛れて、向井を見つめてしまう。
向井は自動販売機の明かりに照らされて、目は閉じていても眩しそうだった。
背もたれの低いパイプ椅子は身体が痛そうで、座り心地が悪いのか、もぞもぞと腰を動かしている。
真歩は向井の様子を眺めながら、ソファに寝転んだ。
でも、向井のことが気になって、眠れる気がしない。
そのうち、向井がクシャミをした。
そういや、寒がりだったけ。
ノルディック柄の小さいブランケットを掛けてはいるけれど、あれじゃあ、身体の全ては覆えない。
寒いに違いなかった。
帰りそびれた上に、寝ずらい椅子、しかも毛布は使われ、寒さに耐える。
そして、それを強いているのは何を隠そう、毛布に包まってぬくぬくしている自分。
向井は優しいのに、自分にはまったく優しさがないみたい。
真歩は向井の優しさに触れ、戸惑いを隠せなかった。
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