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「ねぇ、まだ起きてる?」
堪らず、向井に声を掛けていた。
「ああ」
向井が目を閉じたまま、静かに返事をした。
「寒いよね?」
なんだか、良心が痛む。
自分だけが優遇されるなんて、気がひける。
「気にするな。疲れてるんだから、寝ろ。明日、ダンス中に倒れるぞ」
「‥‥‥‥」
向井の方が理不尽なはずなのに、人の心配をするなんて反則じゃない?
なんだか胸が詰まる。
向井が嫌いとはいえ、自分はそこまで鬼じゃない。
「あ、あの‥‥。一緒に毛布使わない?」
「あ?」
「その椅子じゃ身体痛そうだし、2人でソファに座って、毛布を一緒に使えば、私達フェアでしょ?」
「フェア?」
なんだか恥ずかしい。
向井の提案に自分はすんなり従わされてしまうのに、向井を従わすのには手こずる。
それにいつもなら、向井はこっちの屁理屈を抜かりなく察して突っ込むくせに、どうして今ははぐらかすのよ。
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