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「あんたばっかり、良い格好するなって言いたいの!」
素直にありがとうと申し訳ないが言えない自分。
本当に可愛くない。
真歩はそれ以上言葉を繋げられなくて、口を噤んだ。
このまま提案に従ってくれなくて、もし向井が風邪を引いたら、自分を責めて嘆くのかなとふと思った。
すると向井がむくと起き上がって、近付いてきてくれた。
なんとか提案に従わせることができたのだとホッとする。
真歩が身体をソファの端に座り直すと、向井がドサっと開いた場所に座った。
向井の肩が自分の肩に触れる。
途端に向井の存在を近くに感じて、胸がこそばゆくなった。
そうだよね……。
2人でソファを使うってことは、こんなに距離が近くなるってことだった。
しかも毛布も共有するとなると、もっと近付かなくてはならない。
意識するつもりなんて全くなかったのに鼓動が高鳴り始めてしまい、肩に力が入ってしまう。
自分で提案しておいて、こんなに緊張するなんて‥‥‥。
「毛布、半分貸せ」
「‥‥‥っ」
気付けば毛布を力強く握っている自分が居た。
渡せるよう手を緩める前に向井が毛布を引き寄せてしまったせいで、毛布と一緒に真歩の身体は引っ張られて、向井の身体に寄りかかってしまう。
「‥‥あっ、ご、ごめ‥‥‥」
向井の胸元に身体が入ってしまった。
真歩は慌てて、向井から身体を離そうとする。
「お前、あったかい。毛布より役立つ」
咄嗟に向井に腕を掴まれ、後ろから抱きすくめられた。
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