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真歩はその違和感を受け止めながら、中に入る。
窓を閉めて、談話室を見渡すと、やはり向井の姿はなかった。
談話室の照明はいつも通り点いている。
この照明は向井が点けたに違いないのだけど、当の向井はいない。
どこに行ったんだろう?
ここ数か月間、この授業をしていて、初めてのことだったので、妙にそわそわした。
とりあえず、荷物を置こうとテーブルに近づくと、足元でチャリっと音がした。
何かを踏みつけたような感触。
足を上げると、そこには鍵が落ちていた。
鍵を拾い上げて、まじまじと眺める。
何処にでもあるような見慣れた形をした鍵だった。
柄が黒と白のチェックであるということ以外は。
でも、誰のものだろう。
誰が落としたんだろう。
この談話室は、夜のこの時間、毎日自分たちが使っている。
だけど、図書館が平日の昼間に開放されているから、誰でも入ることが出来る。
昼間、誰かが落としたのか、もしくは向井が落としたのか。
まずは向井に聞いてみて、もし違うなら、図書館の受付に明日届けよう。
真歩はその鍵を無くさないよう、ポケットにしまった。
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