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事実はどうであれ、相手から嫌いと言われるのは気分は良くない。
本当に嫌いだとしても、面と向かって嫌いって言うのはやっぱり失礼だったのかもしれない。
これじゃあ、自分だって非情だ。
真歩は心の中で反省する。
「……あっそ」
向井はそれだけ言うと、何事もなかったように椅子に腰かけた。
また何故か、いつものようにテーブルの一箇所に固まって座るバカップルの構図が出来上がる。
今さらながら、向こうに座ってくださいとも言えず、最近はずっとこの調子だ。
座っていた向井の身体が椅子から浮き、向井の肩が自分の肩に触れた。
向井の腕がふわっと目の前に伸びてきて、身体が勝手にビクッとする。
向井が談話室のテーブルに放置している数学書を取る。
顔がまた熱くなっていた。
「顔、赤い」
向井が真歩を見て、笑う。
「き、気のせいよっ……」
真歩は向井から見えないよう、顔を逸らした。
一瞬、抱きしめられると思ったなんて、絶対言えない。
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