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「もういい、木戸。 寝てないなら、さっさと帰れ」
「はいはーい。
じゃあ、おやすみなさい。真歩さん、またねぇ」
木戸は飄々と答えると、真歩ににこやかな笑顔で手を振ってから研究室を出て行った。
ドアがパタンと閉まり、一気に研究室が静まり返る。
嵐でも連れ去っていったかのようだ。
「‥‥‥‥それで?お前はどうした? 分からない問題でもあったのか?」
「……あ、えっと」
ふと向井の話し方が変わったと思った。
口調がどことなく静かなせいで、優しいような気がしてしまう。
「‥‥昨日、談話室で鍵を拾ったんですけど‥‥」
真歩は向井に拾った鍵を見せた。
「あ、ああ。なんだ神崎が持っていたのか。
家の鍵だから、無くて困ってたんだ」
「家の鍵? じゃあ、昨日は?」
家に入れなかったのだとしたら、申し訳なさ過ぎる。
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