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「これはスペアだから、平気」
言葉よりも先に、安堵の息がもれた。
「‥‥‥それなら良かった」
「ありがとう。 助かった」
向井はそう言いながら、鍵に手を伸ばす。
真歩の指に挟まれた鍵を取るのと同時に、向井の指が深めに真歩の指と絡んだ。
指先に感じた向井の体温に驚いて、鍵を掴んでいた力が一気に脱力して、鍵は向井の掌に落ちる。
真歩は咄嗟に腕を引っ込めていた。
指先から、身体に熱さが伝染して目眩がしそうだった。
「そ、それじゃ、行きます」
真歩は慌てて研究室を出ようとする。
「ああ。また夜にな」
誰かに聞かれたら、絶対に誤解されてしまうであろう変な響き‥‥‥。
いつもより優しい口調。
何故か、さらに酔いそうだった。
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