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深夜の帰り道は、真歩をさらに戸惑わせていた。
恐怖体験をした日から、向井の自宅までの見送りは毎日続いていて、月日が冬に進むに連れ、寒さのせいにして、2人の距離は近くなっているような気がした。
真歩の隣を歩く向井は、いつも路上側をキープしていた。
2人の横を車が通り抜けようとすると、向井はすぐに真歩を路地の壁の方に詰めさせる。
壁と向井に挟まれる空間は一瞬にして空気が変わり、肩や手の甲が触れる感覚に心地よい緊張感が走った。
「ダンスは順調?」
「‥‥‥な、なんですか? 急に」
見えない緊張の濃さが会話によって少し薄まる。
「最近学会がないから」
「学会?」
よく分からなかった。
ダンスと学会が何の関係があるんだろう?
「‥‥いや。で? どうなんだ?」
「とりあえず順調かと‥‥」
「そうか‥‥」
「はい‥‥」
向井なりに心配してくれているのだろうか?
暗がりで見えにくい向井の横顔を見た。
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