不意打ち ≒ 本音を映す

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「勉強の方はだいぶ理解が深まった?」 話ながらも、表情は淡泊。 その表情に隠れた心が少し気になる。 「‥‥‥おかげさまで」 心に浮かんだ言葉をひん曲げずに、そのまま返した。 「なんだか素直だな」 「‥‥‥‥」 今までの自分だったら、何かしら屁理屈を返していたのかもしれない。 でも、なんだかこの空気はそういう風に返した方がすんなりしたから。 ひんやり冷たい夜風にあたりながら体の表面は冷えているのに、隣を歩いている向井の存在とたまに触れ合う体温が、胸の奥にある自己防衛の冷たい氷を溶かし始めていた。 ここ数ヶ月間、勉強にずっと付き合ってくれている向井に、理解が深まってないなんて言ったら失礼な気がした。 それに実際に問題が解けるようになっているのだから、間違っていない。
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